第248章:アッシャー

手を離したら彼女を失ってしまいそうで、抱えたまま部屋の中へ運ぶ。首に回された腕、肩に埋められた頬、腰に絡みつく脚――そこが彼女の居場所だと言わんばかりで、そして実際そうなのだ。そうだ、間違いない。

背後でドアが、かすかな音を立てて閉まる。部屋の中は暗い。いつも点けっぱなしにしている台所の小さな灯りだけが、低く揺れている。ほかは点けない。見える必要なんてない。彼女のことなら、心臓が覚えている。

まっすぐ寝室へは向かわない。廊下で足を止め、ほんの一瞬だけ彼女の背を壁に押し当てる。もう一度キスがしたい。今度は焦りじゃない――満ちたもの。深く、ゆっくり。謝罪と約束を一つに束ねたみたいなキス。

彼...

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