チャプター 5: ペニー
人混みでぎゅうぎゅうの廊下を縫うように歩いていると、タイラーが私の隣にすっと並んだ。
おかしいのは――彼には、不思議と周りの人が勝手に道を空けてしまう歩き方があるってことだ。本人は何もしていないのに。昔は背が高いからだと思っていた。あるいは、いつも落ち着いていて、肩の力が抜けた雰囲気をまとっているから。何があっても動じないみたいな。けれど今は、それだけじゃない気がしてくる。世界は自分のために開くものだと信じている人間には、たいてい本当に道が開ける――そんなことがあるのかもしれない。
タイラーは最初、何も言わなかった。ただ、肘で軽く私をつつく。
「なあ」と彼が言う。「さっきのことだけど。ごめん」
私は横目で彼を見る。
……真剣な顔だ。自分がやらかしたと分かっているのに、どう直せばいいのかがいまいち掴めなくて、眉間が少し寄ってしまう、あの表情。
私は肩を片方だけすくめた。「別に平気」
彼は、息を止めていたのをようやく吐き出したみたいに息をついた。「でも平気じゃない。君に、俺が味方じゃないみたいに思わせたくなかった」
もう一度肩をすくめる。今度はさっきよりゆっくりと。「分かってるよ。優しくしたかっただけでしょ」
タイラーは歩調を少し落として、私とぴたり同じ速さに合わせた。廊下の流れがさらに窮屈になっても、きっちりと。
「俺は味方だよ、ペニー」彼はそう言って、今度は完全に足を止めた。私は少し戸惑って彼の方へ向き直る。
何か言う前に、彼は両手を上げて、私の頬をそっと包み込んだ。掌が頬にあたって、あたたかい。
「俺はいつだって味方だ」彼は言う。「ただ……争いごとが好きじゃないんだ。分かってるだろ」
あまりにも自然に、軽々と言ってのける。まるで、それだけで十分なはずだというみたいに。
そして、たぶん――十分なんだ。
私は小さく、少しぎこちなく、それでも本物の笑みを浮かべる。「分かった」
分かってる。本当に。
タイラーはいつも、場を丸く収める人だ。空気が重くなりすぎたら冗談を言う。緊張を増やすんじゃなく、ほどく。そういうやつ。
私が彼を好きになった理由のひとつでもある。
ただ……時々思う。私の味方でいることって、緊張をほどかないことを意味するんじゃないかって。
時々思う。少しだけ、ほんの少しだけでいいから、その緊張を燃やしたままにして――彼が本当に、心から私の隣に立っているんだって証明してくれることを、私は望んでいるんじゃないかって。
でも、それは不公平かもしれない。
きっと私は疲れているだけだ。過敏になってる。
朝の出来事がぐちゃぐちゃになって、まだそれを引きずってる。バカみたいに。
私は頭の中のもやを振り払って、声にもう少し明るさをねじ込んだ。「で、話って何?」
するとタイラーは瞬時にぱっと顔を輝かせた。まるで、どこかの隠しスイッチを私が入れ直したみたいに。彼は手を下ろし、かかとに体重を乗せて少し揺れる。嬉しいのに、嬉しすぎる自分を見せたくないときの癖だ。
「今朝、親から電話があってさ」彼が言う。「今夜、大きめの夕食会みたいなのやるんだって。来てほしいって。君も」
私は目を瞬いた。「私も?」
彼は喉の奥で小さく笑う。「そう、君。ほかに誰の話をするんだよ」
笑いそうになるのをこらえる。「普段はそんなに……ほら。わざわざ、頼まないじゃん」
「親は君のこと好きだよ」タイラーは当然みたいに言う。「分かってるだろ」
分かってる。
……少なくとも、そう思っていた。
別に歓迎されていないわけじゃない。タイラーの両親はいつだって私に親切だった――特に、うちの親と比べたら。うちの親は、トロフィーでも絡まない限り、私の人生に対してだいたい丁寧な距離を保つ。
でも、彼らの方から「来て」とわざわざ言うことはほとんどない。いつももっと気軽だった。もっと、「そこにいるなら夕飯も食べていきなさい」みたいな。
「ぜひ来て」じゃなくて。
「何かあるの?」と私は聞く。
タイラーは、世界でいちばんどうでもいいことみたいに肩をすくめた。「サプライズだってさ」
「サプライズ?」
「すげえ楽しそうだった。だから、何にせよいいことだろ」
私は疑わしげに彼をしばらく見つめた。「気にならないの?」
彼はにっと笑う。「ならない。いい知らせなら、待つ価値あるだろ」
私は顔をしかめる。「サプライズ待つの、嫌い」
「知ってる」彼は口の端を上げる。「閉まったドアの前の猫みたいだもんな」
私は軽く彼の肋に肘を入れる。彼は片手で私の手首をつかむと、ダンスのステップみたいに私を半歩、自分の方へくるりと回した。
「落ち着けよ、バレリーナ」彼が言う。「楽しいって」
私は目をぐるりと回したけど、もう笑っている。彼がこんなふうだと、怒り続けるのが無理だ。のんびりしていて、世界が自分にいいものをくれると信じ切っている。
……私も、少しはそれが必要なのかもしれない。
今夜が、この変な重たい気分を振り払うきっかけになるかもしれない。
「私、練習あるよ」と念のため言う。
「分かってる。親には言っておいた。大丈夫」
タイラーはまた、眩しいくらいの笑顔を見せた。
「終わったら迎えに行く。今度こそ本当に」彼はそう付け足して、片目をつぶる。
私は鼻で笑った。「絶対だよ」
「希望があればお菓子も持ってく」
「買収しようとしてるでしょ」
「効いてる?」
私は笑う。「ちょっとはね」
彼が私の肩に肩をぶつけ、私たちはまた並んで歩き出した。廊下は少しずつ空いていく。遅刻ギリギリを告げるベルが近づくにつれて、扉が次々にバタンと閉まる音が増えていった。
私たちは教室の前で立ち止まる。
タイラーは身をかがめて、私の頭のてっぺんにキスを落とした。素早くて気軽な仕草なのに、胸の奥で何かあたたかいものがふわりとほどける。
「五時に」彼が言う。
「五時ね」私はふざけて敬礼してみせた。
それから彼は背を向けて歩き出し、生徒の流れに溶けていく。パーカーのフードが、リュックとおしゃべりと、擦り減ったスニーカーの波の中でふわふわ揺れた。
私は少しだけ、彼の背中を見送った。
信用してないからじゃない。
心配だからでもない。
ただ……いいな、と思っただけだ。待つ相手がいるって。自分を待ってくれる誰かがいるって。
私はその感情を振り払って、ベルが鳴る直前に次の授業の教室へ滑り込んだ。
