第51章:アッシャー

ドアを控えめにノックする音がして、その直後に彼女の声が続く――

力の抜けた、少しだけ息の混じる「ねえ」という呼びかけ。頭で制するより先に、胸の奥が勝手に反応してしまう。

俺が椅子の上で身じろぎするより早く、タイラーは家の半ばまで駆けていっていた。自分の足に引っかかりそうになりながら、彼女のところへ。彼女の笑い声が聞こえる――低くて明るい、さっきの甘い蜜みたいな音――そして、タイラーが腕を回して抱き寄せた鈍い衝撃音。

次に来るのはキスだ。見えなくても、わかる。

見ようとする代わりに聞いてばかりいた時間が長いと、嫌でも覚えてしまう種類の音。

殴られたみたいに感じるはずはない。

でも、そう感じ...

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