第76話ペニー

扇風機が、私のベッドの上で、のろのろ、のろのろ、のろのろと回っている。目で羽根のひとつひとつを追いかける。だらけた回転の軌跡が、頭の中でうまく整理できない思考をなぞっているみたいだ。遅い午前の日差しがブラインドの隙間から忍び込み、壁に細い帯を幾筋も落としている。あたたかくて、動かない。

動かなきゃ。起き上がらなきゃ。ミラにメッセージでも送る? 稽古のメモをもう一度見直す? それとも、正直あまり行きたくないあのパーティーに着ていくものを考え始める? でも手足が鉛みたいに重い。感じないようにしているもの全部の重さで。

ノックがする。ひとつだけ。柔らかくて、やけに礼儀正しい音。

「どうぞ」私は...

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