第98話ペニー

鏡の縁が曇っている。温度のせいじゃない。時間のせいだ――五時間ぶっ通しで動き続け、汗で濡れた肌と浅い呼吸、震えが止まらない肩。

疲れている。リュックも疲れている。みんな疲れている。

それでも、私たちは「もう一回」と言った。

そしてダンサーがそう言うとき、それは本気だ。

それは、夜が明けるまで身体に貼りつくテイクだ。夢にまで見るやつ。筋肉が暗記するやつ。骨が違うと言っても、脳に「準備はできてる」と言い聞かせる一回。

リュックはシャツの裾で額の汗をぬぐい、私を見る。「大丈夫か、エトワール?」

うなずく。大丈夫じゃないのに。膝が笑っている。トウシューズの中でつま先が悲鳴を上げている。けれ...

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