第104章 狩野姫空を社会的に殺す

正木稲巳は、まるで何かに引き寄せられるように、狩野姫空と使っていたかつての主寝室へ足を踏み入れていた。

なぜ入ってしまったのか、自分でも分からない。

部屋は、やけに空っぽだった。

空っぽすぎて、むしろ見知らぬ場所みたいに感じるほど。

――前は、こんなんじゃなかったはずだ。

視線を巡らせて、稲巳は気づく。

狩野姫空のものが、何ひとつ残っていない。

本棚に並んでいた本も消えていた。棚板だけが白々と空を晒している。

クローゼットも同じだ。彼女の服は一枚もなく、ぽつんと、どこにでもあるような地味な一着だけがハンガーに掛かっていた。

「稲巳、おかえり。お風呂、沸かしてくるね」

不意...

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