第106章 正木本家へ戻る

騒ぎが広まってから二日。ようやく熱は引きはじめていた。

それでも狩野姫空には、どうにも腑に落ちないことがあった。正木稲巳が一度も彼女のもとへ来ない。正木心歌の醜聞も揉み消さない。釈明すらしない。

まるで――正木家とは無関係の出来事みたいに。

当の正木心歌も、消えたように沈黙したまま。メインアカウントは凍結され、何の反応もない。

……あの人たちのやり方じゃない。

そう思っていた矢先、正木稲巳がやって来た。正木司朗を連れて。

本当に来ないつもりかと思っていたのに。

「何か用?」と姫空が訊く。

正木稲巳は氷みたいな顔のまま、表情ひとつ変えずに言った。

「祖母から電話があった。今夜...

ログインして続きを読む