第110章 キツネ

「芸能界に入らなくても、あの子くらい踏み潰せる」

狩野姫空は淡々と言い切った。静かで、揺るぎない自信。

七年の専業主婦生活が、確かに彼女から少しだけ自信を奪っていたのは事実だ。

けれど――林田守萌なんかと比べたら、余裕で勝っている。

どれだけ自信が揺らいでも、あそこまで自分を安売りすることはない。

江口ココが親指を立て、全力で同意する。

「キキ、その通り。顔だって、頭だって、あんたのほうが何倍も上。ほんと、あのクズ元旦那がどうして林田守萌みたいな裏表のある女に引っかかったのか、意味わかんない」

林田守萌にも、正木稲巳にも。江口ココの嫌悪は、もはや隠しようがなかった。

狩野姫空...

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