第117章 当初彼女を娶った理由

正木稲巳は手練れだった。

ひとつひとつの仕草が、狩野姫空のいちばん敏感なところを、寸分違わず撫でてくる。

人間、欲がないわけがない。

狩野姫空だって例外じゃない。

ただ――今の彼女は、まだ理性が勝っていた。

「正木稲巳。今日は無理」

「そう?」

正木稲巳は引く気がない。

狩野姫空は一歩踏み込み、彼の胸を押し返した。

「まさか、そこまで変態じゃないよね?」

その一言で、正木稲巳の昂ぶりは一瞬で萎えた。

「トイレでどうにかしたら?」

狩野姫空が追い打ちをかける。

正木稲巳の顔色が露骨に悪くなり、声が低く沈む。

「狩野姫空……わざとだろ」

「生理まで私がコントロールで...

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