第124章 飴と鞭

狩野姫空は、鼻で笑った。

飴と鞭、ってやつ?

正木稲巳は、彼女を妻としても、子どもの母親としても、一度だって見たことがない。

きっと「こいつはプライドもない、卑屈な女だ」とでも思っているのだろう。

どんな扱いをしても、手招きひとつで尻尾を振って寄ってくる。

それを本人は「幸せ」だと勘違いして、喜んで飲み込む――そんなふうに。

五味孝は狩野姫空をじっと見つめた。

だが今の彼女が何を考えているのか、さっぱり読めない。

「……分かった」

狩野姫空は手を伸ばし、ジュエリーとカードを受け取る。

それから自分の車へ乗り込んだ。

五味孝は内心、動揺していた。

以前なら、社長が宝飾品...

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