第138章 道化のようだ

「兄さん、もう証拠は揃ってるのよ? それでも狩野姫空っていう悪女を庇うつもり? お母さんの治療だなんて口実で、ほんとはお母さんを害そうとしてるんだから」

正木心歌はいまこの瞬間にも、正木稲巳が狩野姫空と離婚し、彼女を家から叩き出してくれればいいのにと思っていた。

正木稲巳は冷えた眼差しをわずかに深め、狩野姫空をじっと見据える。

――まるで、彼女が何か言い訳するのを待っているみたいに。

狩野姫空は胸の奥で冷笑した。

罠を用意したってこと?

ずいぶん手が込んでる。

これを口実に、私を身一つで追い出すつもりなんだろう。そうすれば林田守萌を堂々と家に入れられる。仮に世間に露見したところ...

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