第149章 彼女はわざとだ

正木心歌は狩野姫空の姿を見た瞬間、感情が爆発しかけた。

「狩野姫空、あんた――」

言いかけて、はっとする。今の自分は指一本動かせない。悔しさを噛み殺すしかなかった。

「早く、これ解いてよ」

狩野姫空は心歌を相手にせず、ソファに座る正木稲巳へ視線を向ける。

「約束の謝罪は?」

「心歌、謝れ」

正木稲巳の声は命令そのものだった。

正木心歌は憎々しげに狩野姫空を睨みつけ、歯ぎしりしながら吐き捨てる。

「……ごめんなさい」

「何に対して?」

狩野姫空が淡々と返すと、心歌の怒りはさらに煮えたぎった。

「狩野姫空、わざとでしょ? 絶対わざとだよね?」

――そう。わざとだ。

「...

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