第16章 子どもの気持ちを裏切るな

「ママ、お誕生日おめでとう」

狩野姫空が玄関に入った瞬間、正木司朗がバースデーケーキを両手で捧げるように差し出してきた。

放課後、わざわざ選びに行ったものらしい。

「ふん」

梅崎静が鼻で笑い、姫空に露骨な白目を向ける。

「ママ、お願いごとしなよ」

ケーキの上で揺れる蝋燭の火が、なぜだかやけに目に痛かった。

「昨日もう願ったの。ケーキ、用意してくれてありがとう」

姫空は手を伸ばし、受け取る。

司朗は特に気にしていない様子だったが、静がわざとらしく口を挟んだ。

「まあ司朗、ママはあんたが買ったケーキなんて別に嬉しくないんだって」

司朗が姫空を見る。

「昨日願ったからって、...

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