第176章 何かを知ったようだ

ドクン、ドクン。

狩野姫空は、自分の鼓動が喉元までせり上がってくるのを感じた。

こんな感覚――今まで一度も、なかった。

正木稲巳と付き合っていた頃だって、緊張はした。けれど、ここまで胸が暴れるようなことはない。

視線が、勝手に正木修羽の顔へ吸い寄せられる。

整った顔立ち。濃い眉、はっきりした目鼻立ち、高い鼻梁。唇の色まで妙に鮮やかで、輪郭は鋭い。

稲巳とは、まるで似ていない。

稲巳は冷ややかで、どこか刃のような鋭さがあった。

それに対して修羽は、底が見えない。目を見ても、何を考えているのか掴めない。

稲巳は感情があれば、視線に出る。

けれど修羽は違う。深い瞳の奥に、何ひと...

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