第195章 腐れ縁が切れない

正木稲巳の顔は、墨を塗ったみたいに真っ黒だった。

「江口教授。あれは俺の問題だ。あなたには関係ない。それと――狩野姫空に手を出すな。そうしないなら、俺たちの協力関係はここまでだ」

だが江口宇介は、その脅しに怯むどころか、薄く笑った。

「正木社長、勘違いなさらないでください。エル製薬と取引するのは、あなた個人ではなくDS不動産です。こちらがあなたに頭を下げる筋合いはありません」

「そうか。なら、江口教授――うちも手を引く」

正木稲巳は冷たく言い捨てると、足早にオフィスを出ていった。

エル製薬を出た狩野姫空が車に乗り込もうとした、その瞬間。

バタン。

車のドアが外から閉められた。...

ログインして続きを読む