第57章 狩野姫空はまた正木司朗を殴った

正木家

正木稲巳が帰宅すると、屋敷の空気がどこか重いことに気づいた。

リビングのソファには林田守萌、正木心歌、梅崎静が並んで座っている。だが、正木司朗の姿はない。

「旦那様、お帰りなさいませ」

執事の声に、三人がはっと顔を上げた。

真っ先に立ち上がったのは心歌だった。稲巳のもとへ駆け寄り、焦れたように言う。

「お兄ちゃん、やっと帰ってきた! 早く二階に行って司朗をなだめてよ。晩ごはんも食べないで、ずっと部屋にこもってるの」

「……何があった」

稲巳は眉を寄せた。今朝家を出る頃には、司朗の機嫌はようやく落ち着いていたはずだ。

心歌が不機嫌そうに唇を尖らせる。

「狩野姫空のせ...

ログインして続きを読む