第58章 過ちを認めても許さない

五味孝が恭しく頭を下げた。

「奥様、正木社長は本日たいへん立て込んでおりまして……お目にかかるお時間が取れないかと」

狩野姫空は眉をひそめる。

忙しい――そんなのは口実だ。

正木稲巳が何を考えているのか、いまいち掴めない。

けれど「会わない」と言われた以上、ここで粘っても仕方がない。時間の無駄だ。

「……分かりました」

姫空は席を立ち、そのまま部屋を出た。

廊下を歩いていると、すれ違ったスタッフ二人が、ひそひそと話している声が耳に入る。

「聞いた? 守萌の新作『ご令嬢』、もうすぐ正式発表らしいよ。あとは男主役が決まればって」

「『ご令嬢』って大きいIPだし、放送始まったら...

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