第65章 正木稲巳が離婚しない理由

離婚の話題になると、狩野姫空は小さく息を吐いた。

「正木稲巳はこの数日、出張で会社にいなかったの。たぶん……戻ったばかりだと思う」

「君のことは、まだ兄貴たちには話してない。離婚の手続きが済んだら呼ぶよ。みんなで集まろう」

「うん」

狩野姫空は頷いた。

彼女も同じつもりだった。正木稲巳が戻っているなら、時間を作って会い、手続きを進めなければならない。

ここまで来た以上、いつまでも引き延ばす意味はない。

午後、隙を見て――姫空は天芸メディアを訪れた。

「また来たの?」

受付は狩野姫空を見るなり、露骨にうんざりした顔をする。

姫空はその態度に取り合わず言った。

「正木社長に...

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