第66章 誰が誰を怒らせたか

林田守萌は狩野姫空の姿を見つけると、しかも顔色が冴えないのを確認して、ほっと息をついた。すぐさま笑顔に切り替える。

「なんだ、姫空じゃん」

狩野姫空は一瞥だけくれて、その作り笑いの仮面を相手にすることもなく、踵を返して歩き出した。

林田守萌は追いかけ、同じタイミングでエレベーターに乗り込む。

「顔色悪いけど、稲巳に何か言われた? ていうかさ、録音持って告げ口って……自分で笑えない? 稲巳はあんたのこと愛してないんだよ。そんな男が、あんたの味方するわけないじゃん」

狩野姫空は答えない。

分かっている。これはただの挑発だ。

「ねえ、稲巳がいつまでも離婚の手続きに行かない理由、知って...

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