第88章 考える時間が必要です

木下宗は臆することなく言い切った。

「分かってる。君が芸能界に入りたくないのは、あそこが複雑すぎると思ってるからだろ? だから俺が『マスクド・シンガー』のコンテスト番組を用意した。顔出しは不要、個人情報も不要。芸名だけ決めればいい」

「……じゃあ、番組が終わったら?」狩野姫空が問い返す。

少し舞い上がりかけた心を、彼女はすぐに落ち着かせた。

世の中にタダの話なんてない。

木下宗は商売人だ。どれほど自分の歌を気に入ったとしても、見返りも求めずに巨額を投じ、彼女のためだけに番組を作るはずがない。

狩野姫空の利発さと冷静さは、木下宗もすでに骨身にしみて知っている。彼女の質問の意図を汲み...

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