第92章 私がつらいなら、みんなも楽にはさせない

狩野姫空の振る舞いに、正木稲巳も林田守萌も息を呑んだ。二人はほとんど同時に立ち上がる。

「狩野姫空……ひどすぎるよ……!」

林田守萌は泣きながら、そのまま駆け出していった。

正木稲巳が詰め寄り、狩野姫空の顎を掴み上げる。歯を食いしばった低い怒声。

「お前、いったい何がしたいんだ?」

「別に。私が苦しいなら、ほかの連中にも楽にはさせない」

狩野姫空は冷え切った目で見返した。そこには、ほんのわずかな温度すらない。

その視線に正木稲巳は一瞬だけ言葉を失う。だが次の瞬間、目つきはさらに鋭くなり、乱暴に彼女を突き放した。

「……くだらねえ」

吐き捨てるように言い、大股で去っていく。

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