第5章
北野羽月視点
セットの照明が目に突き刺さるように眩しい。
感情的なシーンの撮影を終えたばかりで、額には汗が玉のように浮かんでいた。友人の死を知った鈴木玲奈が苦悩する場面――それは、私が咲弥を失った苦しみを、そっくりそのまま追体験しているかのようだった。
あの小さな子のことを思うたび、胸が張り裂けそうになる。
「カット!完璧だ!」
工藤監督が満足げに頷く。
「北野さん、君の感情表現は素晴らしい。十五分休憩だ」
私は椅子に崩れるように座り、手の甲で涙を拭った。すぐにアシスタントがタオルと水を持ってきてくれる。その時、セットの入り口がにわかに騒がしくなった。
「黒木さん...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章


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