第10章

斎場の廊下は、まるで空気が凝固してしまったかのように静まり返っていた。

藤原潔志はそこに立ち、その目は虚ろだった。

彼は田中安子と共にいることを選ばず、独りで佐藤絢子の葬儀を執り行っていた。

「藤原教授、告別式は三日後に行い、その後火葬となります」

斎場の職員が小声で告げる。

藤原潔志は機械的に頷き、職員が絢子の遺体を運び去っていくのを見送った。

絢子が運び込まれたばかりの時、彼女の顔が驚くほど穏やかで、まるでようやく解放されたかのようだったことを思い出す。

三日後、神社内の告別式場は人で溢れ返っていた。藤原潔志は最前列に立ち、別れを告げに来た人々が想像をはるかに...

ログインして続きを読む