番外編 柚子

高校一年の春、私は初めて神宮眠子という存在を意識した。

彼女は隣のクラスの優等生で、成績優秀者としてその名前はいつも学校の掲示板の一番目立つ場所に貼り出されていた。私が髪を染めたことで先生に呼び出され、職員室で説教されている時も、決まって耳にタコができるほど聞かされたのは、棘のある比較だった。

「神宮さんを見習いなさい。成績は良いし、振る舞いも上品で、髪もきちんと黒くして……」

私はそういう「良い子ちゃん」に好感を持てなかった。彼女たちは私とはまったく違う世界に住んでいて、規則正しく、大人たちに蝶よ花よと育てられている。

一方の私は、先生たちから「不良生徒」のレッテルを貼られ...

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