番外編 柚子

病院の白い廊下は、いつも眠子が着ていたあの白いシャツを思い出させる。

彼女に付き添ってここに来るのは、もう三度目だった。医師は抗うつ薬と睡眠薬の処方箋を出した。

「神宮さん、必ず時間通りに薬を飲んでくださいね」

医師は眠子を見つめて言った。

「毎週の診察も忘れないように」

眠子は頷いたが、その視線は窓の外を彷徨っていた。彼女がただ適当に相槌を打っているだけなのは、私にはわかっていた。

「先生、私が見ておきます」

私は処方箋を受け取り、医師に一礼した。

病院の玄関を出ると、眠子が不意に顔を上げて私を見つめた。

「柚子さん、会社に戻って仕事がしたい」

私は驚いて...

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