第四章

 薬の効き目は早かった。

 私の呼吸は止まり、心臓の鼓動も消え失せた。暗闇が潮のように押し寄せ、頭上まで呑み込んでいく。だが、周囲の音だけはまだ聞こえていた。福山さんは言っていた。この仮死薬は、聴覚だけを最後の三十分間残してくれるのだと。

「患者、北園念。蘇生措置及ばず、死亡を確認」

 医師の声は冷静だった。直後、白い布が私の顔を覆う。

 その時だ。病室のドアが、凄まじい音を立てて蹴り開けられた。

「北園念!」

 神谷治世だ。怒気を孕んだ足音が部屋に飛び込み、ベッドサイドへと迫る。

「いつまでふざけているつもりだ? 点滴を抜いたと看護師から聞いたぞ。なんだ、今度は白い布を被って...

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