第六章

(神谷治世視点)

 平塚桂衣は完全に動転していた。あらゆる事態を計算していた彼女も、まさか北園念が当時の証拠を残していたとは夢にも思わなかったのだ。彼女はずっと、北園念のことをただのお人好しで、神谷治世の人違いにも気づかない、あるいは劣等感から言い出せないだけの愚かな女だと思い込んでいたのだから。

「治世お兄様、聞いて! 誤解よ!」

 平塚桂衣は必死の形相で神谷治世の腕にしがみつこうとした。

「これは北園念の捏造だわ! あの子は私に嫉妬してるの。死んでまで私を陥れようだなんて! 火傷の跡があるのは私の腕よ。ほら、見て!」

 彼女は慌てて袖をまくり上げ、硬貨ほどの大きさしかない火傷の...

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