第九章

 それから三年。

 A市に浮かぶ孤島の邸宅。微かに潮の香りが漂い、絶好の日和だった。

 私は化粧台の前に座り、鏡に映る自分を見つめていた。純白のウェディングドレスを身に纏った自分を。

「念ちゃん、準備はいいかい?」

 背後から、温かく低い男の声が聞こえた。

 振り返ると、豊沢政七がドア枠に寄りかかっている。その瞳は春の泉のように優しかった。身体に馴染んだ白いタキシード、胸元には私の一番好きな椿の花が飾られている。

 彼は北園グループの現在のパートナーであり、この三年間、私の心の空洞を忍耐と愛で少しずつ埋めてくれた男性だ。

「まだ少し、緊張してる」

 私は微笑んだ。

 豊沢政...

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