第6章

 弘人と恋人としての関係を確かめ合った瞬間、彼の笑みが胸の奥に残っていた最後の陰りまで、すっと払いのけた。

 もう誰の視線からも逃げない。弘人は私の手をきゅっと握り、そのまま車へと導いた。

 三十分後、私たちは高校の駐車場に着く。

 劣等感を隠すために長年着続けていた、だぶだぶのパーカーは捨てた。代わりに、仕立てのいいベージュのカシミヤニットと、脚に沿うスキニーデニム。いつも適当に結っていた黒髪は、今日は指通りよく肩に落としている。

 弘人と指を絡めたまま校舎の扉を押し開けた、その瞬間。

 ざわついていた廊下が、まるでミュートをかけられたみたいに静まり返った。

 無数の視線が、ス...

ログインして続きを読む