第6章

「親子リレーが始まります! 保護者の皆様とお子様は、トラックまでお集まりください!」

田中先生の澄んだ声が、メガホンを通してグラウンドに響き渡る。隣に立つ亮一は、白い体操服の裾をきゅっと握りしめ、緊張した面持ちで小さく足踏みをしていた。

「いい? 走り方は教えた通りにね。背筋を伸ばして、腕をしっかり振るのよ」

私は彼の前にしゃがみ込み、体操服の襟を整えながら囁いた。

「緊張しなくて大丈夫。朝の練習では、すごく上手に走れてたじゃない」

「うん!」

亮一はこくりと力強く頷き、その瞳に固い決意の光を宿した。

この日のために、ここ数週間続けてきた早朝のランニングが、ようやく実を...

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