第6章

白銀家の応接室は、記憶にあるよりもずっと息苦しい場所だった。

祖父が中央の背もたれの高い椅子に腰掛け、父と数人の叔父たちがその両脇を固めている。全員の視線が、私一人に突き刺さっていた。

私は背筋を伸ばし、努めて冷静を装ったが、掌にはじっとりと汗が滲んでいた。

「涼華、呼び出した訳は分かっておろうな?」

祖父の声は、恐ろしいほどに平坦だった。

「学園の掲示板にて、由紀の噂の火消しをいたしました」

私は祖父の目を真っ直ぐに見つめ、声が震えないよう必死に堪えた。

『名家の政争、ここに開幕!』

『お嬢様、ご家族からお叱りを受けるのかしら?』

「それだけではないぞ」父...

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