第9章

桜が舞い散る四月。青藤学園に、新しい季節が訪れた。

しかし、キャンパスに流れる空気はどこか落ち着かず、生徒たちはあちこちで囁き合っている。話題は決まって、二学期の終わりに学園中を揺るがした『クリスマスパーティー事件』についてだ。

「聞いた?白銀さんが普通科のクラスに移ったって」

「神崎先輩も、ようやく生徒会長に復帰したらしいわよ」

「それにしても、あの特待生の森川由紀がお咎めなしなんて、信じられない……」

桜並木の小道を歩いていると、そんな声が風に乗って耳に届く。

いつもと違うのは、かつて私の視界を絶えず埋め尽くしていた無数のコメントが、嘘のように減ったこと。時には、丸一日ひ...

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