第7章

 雨宮星はPTSD治療の第一人者だ。

 寛貴はその論文を十日間かけて読み込み、七通のメールを送り、十数回電話をかけた。あらゆるコネを使い、ようやく今日の午後二時の予約を取り付けたのだ。

 若菜にとって最後の希望。

 いや、彼ら家族にとっての最後の希望だった。

 診療所はA市にある古いビルの一角にあった。こぢんまりとした場所だ。

「土田若菜様」看護師が顔を覗かせる。

 雑誌を閉じて立ち上がる若菜に続き、寛貴もまた腰を浮かせた。

「土田様」看護師は礼儀正しく言った。

「こちらでお待ちください。雨宮先生が、まずは奥様と二人だけでお話をなさいとのことで」

 寛貴は一瞬強張ったが、す...

ログインして続きを読む