第130章 酔ってない

昔日のことを思い返すと、立花郁葉はふと気づく。伏見行哉と過ごした三年間は、痛みだけでできていたわけじゃない。

そのあいだに埋もれていた甘い記憶が、年の瀬になると潮が満ちるみたいに、少しずつ浮かび上がってくる。

自分は本来、過去に浸るタイプじゃない。……それでも正月だけは、どうしても感傷が混じる。

木下おばさんは荷物をまとめ終えると、すぐに帰る支度を始めた。

立花郁葉は玄関まで見送って言う。

「家のほうが本当に忙しいなら、そんなに急がなくてもいいですよ。私ひとりで住んでるだけですし、困ることなんてないから」

「立花嬢、ひとりでいるなら、普段からちゃんと三食食べてくださいね。服も、洗...

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