第6章
母の夢を見た。
母は台所のテーブルに座り、「病気はよくなるわ。何だってする。必要なら何だって」と言っていた。うまくいかない、という可能性をそもそも想像したことのない人の声だった。だからこそ、契約が届いたとき、私は迷わず「はい」と答えた。病院のベッドの上で凍りついた身体。止まった時間。条件は単純――果たせば、治って家に帰れる。
夢の中で、私はそれを果たした。
家に帰った。ドアを開けて中へ入った。
部屋は空っぽだった。
私はすべての部屋を見て回った。二度。三度。家具も。窓辺の鉢植えも。冬になるとガタガタ鳴るラジエーターも。
「ママ?」幼いころから見つめてきた壁に声が跳ね返...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
