第44章 身分を強制する

ホテルの外に、一台のスポーツカーが静かに停まっていた。田中由衣は車内で、鏡に向かって何度も自分のメイクをチェックしている。彼女はようやく、正々堂々とパーティー会場へ入るための名案を思いついたのだ。

彼女は腰をくねらせ、優雅にホテルのロビーへと歩を進めた。入り口に着いた途端、一人の女性警備員に行く手を阻まれる。「お客様、招待状をご提示ください」

田中由衣は傲慢に眉を吊り上げた。「招待状?彼氏からそんなものが必要だなんて聞いてないわ」

「お客様の彼氏様とは、どなたでしょうか」女性警備員は礼儀正しく尋ねる。

「江口匠海」田中由衣は、誰にも聞き逃されぬよう、一字一句はっきりと告げた。

その...

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