第45章 退屈な男

「匠海、あっちに座りましょう!」田中由衣が田中春奈の隣にある空席を指差して言った。

江口匠海はわずかに目を見張った。彼もちょうど、田中春奈をあんなにも晴れやかに笑わせている男がどんな人物なのか、見に行きたいと思っていたところだった。

そうして、二人は田中春奈の方へと歩いていった。

田中春奈が顔を上げると、江口匠海と田中由衣が肩を並べて歩いてくるのが目に入った。

隣のテーブルが空いていることに気づき、彼女は心の中でまずいと叫んだ。まさか、彼らはここに座るつもりなのだろうか?

田中由衣の目に得意げな光が走り、さも嬉しそうに挨拶する。「春奈、奇遇ね、あなたもここにいたんだ!」

田中春奈...

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