第46章 心を尽くして配置する

中島拓哉は頷いた。「じゃあ、待っててくれ」そう言うと、彼は個室から出て行った。

田中春奈の携帯も鳴り始めた。着信表示を一瞥すると、江口さんからだった。

彼女は急いで電話に出る。「もしもし、江口さん」

「春奈、どこにいるんだね?姿が見えないじゃないか」祖父の温和だが、焦りを帯びた声が聞こえてきた。

「二階のボックス席で休んでいます」田中春奈は慌てて答えた。

「すぐに下りてきなさい」祖父は続けた。

田中春奈は仕方なく、重い足取りで階下へ向かった。一階のロビーにたどり着くと、江口さんを囲む人だかりが目に入った。銀髪の彼は、ひときわ矍鑠として見えた。

江口さんはすぐに田中春奈に気づき、...

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