第47章 プロポーズの現場

田中由衣の目に陰険な光が走り、両の拳を固く握りしめ、江口匠海の心を取り戻すことを誓った。

しかし田中春奈は、もはや彼女とこれ以上関わりたくはなく、身を翻して人の少ないベランダの方へ向かおうとした。その時だった。ロビー内に突如として甲高い男性の声が響き渡った。今宵特別に招かれた司会者だ。しかも、彼が叫んでいるのは、まさしく彼女の名前だった。

「田中春奈様、ステージまでお越しください。大切な落とし物がございました」

田中春奈は呆気にとられた。見れば、招待客たちは皆ひそひそと囁き合い、一体どんな品物なのかと好奇の目を向けている。司会者がこのような場で名指しで呼び出すほどのものとは、一体何なの...

ログインして続きを読む