第107章 「流産」

午前の風は、陽だまりの中にあってもどこか冷たさを残していた。

新井新菜の、湿った闇を含む声が耳に触れた瞬間。竹内葵はぞわりと背筋を撫でられ、肩が勝手に震える。

庄司優斗のことだけじゃない。十年近くも「親友」だと思ってきた相手のことすら、結局なにも見えていなかったのだ。

――私、ほんとに節穴。

目も、心も。

眠れない夜が続いた時期、葵は何度も自分を責めた。どれほど愚かなら、あの二人に一年以上も結託して騙されるのだろう、と。

胸の奥の澱は濃い墨みたいに広がって、どうしても薄まらない。それでも表情だけは取り繕い、甘い笑みをぎこちなく歪めた。

「ど……どうしたの? 急に……」

新井新...

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