第11章 お互い様

竹内葵の視界の端に、遠くで立ち止まった庄司優斗の背中が映り込み、胸の奥がひやりとした。

まだ証拠は握りきれていない。今ここで暴くのは得策じゃない。対策を練る時間なんてあるはずもなく、目の前の相手を見た瞬間、半ば反射でその襟元をつかみ、角の壁際へ引きずり込む。唇の前に指を一本立てた。

「しーっ」

突然壁に押しつけられた早瀬信祐は、言葉を失ったまま固まる。瞳に浮かんだ驚きが、なかなか消えない。

竹内葵は心臓が喉までせり上がっていて、自分の行動がどれほど不適切かなんて、考える余裕もなかった。

遠くの庄司優斗がゆっくり振り返る。広々とした廊下には、歩いている客が二人と、行き来するスタッフだ...

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