第42章 デマ!

美術館は五時で閉館だ。その時間帯の正面入口は、たしかに人が多い。

竹内葵は目の前の男を見つめ、数秒だけ逡巡してから、自分から声をかけた。

「今夜、時間ある? よかったら私がおごる」

あの雨の夜のことは、どうしたって借りのままだ。

何も言わずに済ませるのは、さすがに気が咎める。

前に食事をしたときだって、会計は彼が持ってくれたのだから。

「何時にする」

「私はいつでも。早瀬さんの都合のいい時間で」

早瀬信祐は腕時計に目を落とし、淡々と言った。

「六時半。店は君が決めて、場所を送ってくれ」

「うん」竹内葵はふっと笑う。「運転、気をつけてね」

早瀬信祐は小さくうなずき、背を向...

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