第53章 庄司優斗が渡した別れ金

竹内葵は二歩ほど前に出て、新井新菜の視界をさえぎるように立ち、声を落として小言をこぼした。

「遅いよ。なんで今ごろ?」

夕方、庄司優斗は彼女が残業だと知ると、運転手には先に帰るよう言い、自分が迎えに来ると告げた。

彼女が伝えた時間は、七時半ごろ。

本当なら、さっきの一幕にも間に合って、新井新菜の薄っぺらい嘘と、やけに上手い演技を目の前で見せつけてやれたはずだったのに。

「春峰通り、夕方の渋滞がひどくてさ。二十分ほど遅れた」

庄司優斗は眉をひそめ、説明しながら、そっと彼女の腕をつかんで青あざを確かめる。

「どうした?」

竹内葵は笑ってみせた。

「大したことないよ。さっき巡回し...

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