第55章 早瀬信祐は危ない!

女が水の中へすっかり沈み込み、もがきもせず、湖水に少しずつ命を奪われていく、その瞬間――。

「あっ!」

竹内葵は悲鳴を上げ、びしょ濡れの自分を湖から引き上げるように跳ね起きた。

まだ夜明け前。部屋の灯りは、入口に置かれた小さな暖色の常夜灯だけだった。

「どうした、葵?」庄司優斗が物音に反応して跳ね起き、照明を点ける。彼女が叫んでいるのを見て目を丸くし、慌ててティッシュを何枚も引き抜いて拭きながら、やわらかな声で宥めた。

「悪い夢でも見た? 大丈夫、大丈夫。俺がいる。怖くないから」

竹内葵は手を上げ、首元に触れる。

水じゃない。汗だ。

枕もシーツも、ぐっしょり濡れていた。

夢...

ログインして続きを読む