第77章 新井新菜は焦らずにいられるのか

竹内葵の心は、唐突に氷の底へ突き落とされたみたいに冷え切った。

考えるまでもない。

新井新菜がこのタイミングで庄司優斗を呼び出した理由なんて、ひとつしかない。

庄司優斗が彼女に別れを切り出してから、もうずいぶん日が経つ。いちおう仲直りはしたものの、新菜はそれ以来、今日まで一度も彼に会えていない。

焦らないほうがおかしい。

しかも彼女はいま「妊娠している」ことになっている。庄司優斗は血気盛んな年頃だ。

今夜、どれほど乾いた薪に火がつくのか――想像するだけで胸の奥がざわつく。

竹内葵は拳を握りしめた。強張っていた背中が、ふっと緩む。乱れていた呼吸を整え、喉の奥で低く笑った。

嘲り...

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