第82章 ときめき

早瀬信祐が竹内葵からのLINEを受け取ったのは、車のエンジンを切った直後――降りようとした、その瞬間だった。

画面に表示された文面を読んだ彼は、眉をわずかに寄せる。感情を表に出さない程度の、ほんの小さな動き。

竹内葵がどうやって知ったのかは訊かない。ただ「了解」とだけ返し、すぐに加賀裕太へ電話をかけた。

呼び出し音が三十秒ほど続いて、ようやく繋がる。

「もしもし、信祐」

耳に流れ込んできたのは裕太の声だけじゃない。幾重にも重なる歓声、どよめき、誰かの叫び――サーキット特有の熱気が、そのまま受話口から押し寄せてくる。

早瀬信祐は眉をひそめた。

「もう始まってるのか?」

「え、兄...

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