第9章 彼の深い愛情と優しさは、もう彼女のものではなかった

新井新菜は、どうにか驚いたような笑みを作ってみせた。頭の中で言い訳が高速で組み上がる。

「バッグをメンテに出しに来たついでに、ちょっと見て回ろうかなって」

手に提げているのは、シャネルのCFシリーズの淡いピンクのバッグ。

値段は、だいたい8万から——。

けれど竹内葵は、そのバッグに見覚えがあった。新井新菜のインスタで見たことがある。庄司優斗が彼女に贈った、数あるバッグのうちのひとつだ。

葵は眉を上げて尋ねる。

「そのバッグ、すごく似合ってる。いつ買ったの? 私も同じの持ってるよ。白だけど」

そのバッグも、庄司優斗がF国へ出張したときに買ってきてくれたものだった。

時期は——新...

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