第90章 告げ口をする

新井新菜が館長室を出て事務エリアに戻ると、足がふっと止まった。けれど、同僚たちの誰からも気遣いの言葉はない。

普段はそれなりに仲のいい連中ですら、椅子から立ち上がりもしなかった。

新菜は拳を握りしめ、奥歯を噛む。

どんな味だったのか、自分でもうまく言えない。失望か、悲しみか、憎しみか。

全部だ。

けれど、言葉にして説明はできなかった。

それらが何度も絡まり合い、巨大な檻になって胸を押し潰す。息ができないほどに。

利害でつながった友情ほど、脆いものはない。

新菜はひとつ息を吸い、口角だけを引きつらせた。デスクの私物すら片づけないまま、背中に突き刺さる無数の視線の中を歩き、エレベ...

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