第10章 彼女も会社を立ち上げたい

茜音視点

私が何か言うより早く、彼女は菅田悠一の腕にするりと絡みついた。声だけは甘く、やわらかい。

「お兄ちゃん、これ食べて。お兄ちゃんのために作ったの」

――近すぎる。

あの仕草は、私に見せつけているみたいだった。

二十年。二十年の「一緒にいた」時間。それが彼女の誇りで、切り札なのだ。

菅田悠一が眉をひそめ、腕を引こうとした、その瞬間。

私は箸を置き、だるそうに口を開く。

「寒いの?」

菅田夢香がきょとんとして、意味が分からない顔でこちらを見る。

私は同じ調子で続けた。

「寒くないなら、なんでそんなに悠一兄さんにくっついてるの?」

菅田悠一は反射みたいに腕を引き抜き...

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