第107章 彼女に粘着する

茜音POV

路地裏の隅が、また一瞬で――死んだみたいに静まり返った。

私はうめき声の渦の真ん中に立っていた。白いスーツは相変わらず、埃ひとつ付いていない。ゆっくり振り向く。冷え切った眼差しが薄闇を貫き、山本鈴へと静かに落ちた。

さっきまで顔に貼り付いていた醜い興奮も、勝ち誇った笑みも、跡形もない。そこにあるのは、極限まで研ぎ澄まされた恐怖だけ。

無傷の私を見た瞬間、山本鈴の膝ががくりと折れた。足元から冷気が這い上がり、頭のてっぺんまで突き抜けていくのが分かる。

「ひっ……!」

甲高い悲鳴を上げ、彼女は踵を返して逃げ出した。転げるように、這うように、なりふり構わず。人生で出せる力を...

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